のホームに戻る

00/11/27 相場の張り方(その3)

ファンダメンタル分析について2

前回は配当利回り・PERと金利の関係について説明しました。今回はPERの水準はどうやって合理的に説明されるべきか?という点について説明します。

PERは現在の株価が利益(正確には一株あたり利益)の何倍まで買われているかを図るものです。株価を当てるというのは、株価の今後の動きを当てるということですので、PERの場合も将来の利益を元にしたPERを使います。予想利益を基準とするPER,予想PERと呼ばれるものです。

具体的な例では、株価が1000円で、来期の予想一株あたり利益(予想EPSといいます。Earnings per share の頭文字です)20円としますと、予想PER=50倍ということになります。
では予想PER50倍のA社と予想PER100倍のB社ではどちらを買うべきでしょうか?単純に考えれば、予想PER50倍のA社でしょう。が実際にはその通りに成るとは限りません。
A社の利益の成長性が年率10%増加を予想し、B社の利益の成長性が年率30%増加を予想しているとします。株価が現在ともに1000円、予想EPSはA社が20円、B社が10円とします。(上記の通り予想PERはそれぞれ50倍と100倍)
今後10年間のEPSの動きは次のとおりです。(単位=円)
会社名 来期 1年後 2年後 3年後 4年後 5年後 6年後 7年後 8年後 9年後
A社 20.0 22.0 24.2 26.6 29.3 32.2 35.4 39.0 42.9 47.2
B社 10.0 13.0 16.9 22.0 28.6 37.1 48.3 62.7 81.6 106.0
こうやって並べると、将来の成長率が高いと現在のPERが例え高くても、割高であるとは単純に判断できないことが分かります。いわゆる成長株の高PERです。
この最も典型的なのが、昨年から今年前半に見られたIT関連相場の動きです。これからの株のEPSはマイナス(赤字)でしたが、将来の利益成長率が数倍の単位であったため、株価の水準が「合理的である」という判断がなされたのでした。

しかし、現在のIT株の暴落をみれば、やはり無茶は続かない・・・という感じになります。でも去年の今ごろは、PERなど無視して、IT株を買いまくれば勝てたのです。高値で売りさえすれば。
また、将来の成長性というのも曲者です。というよりPERを論じる時一番の問題は正に将来の成長性です。上記のように10%と30%の20%の成長率格差があれば、2倍のPERでも十分に正当化されるのです。ではこの「長期の成長性」というのはどこから来るのでしょうか?分かりやすく言えば、会社の将来は何によって左右されるかということです。大きなものから考えると
(1) 日本という国全体の動き
(2) その会社の属している業界の動き
(3) その業界の中のその会社の相対的な動き

(1)の視点にたてば、日本株を買うか米国株を買うかという議論になります。
(2)の視点にたてば、鉄鋼株を買うか、ソフトウェア株を買うかという議論になります。
(3)の視点にたてば、トヨタと買うか、日産を買うかという議論になります。

要はPERはこのような視点で比較すべきであると思います。在る業界とある業界を比較する時とか、業界内の在る企業とある企業との比較する時などに利用する方が、尺度として適切であると思います。新日鉄とトヨタとソフトバンクの比較には使いにくいのです。業態によるものか、業界内でのシェアによるものかの影響がごちゃ混ぜになるので、比較が難しいからです。そして、自分の考える予想成長率と現在のPERの水準が整合的であるかどうか、が判断の基準となります。

前のページへ

次のページへ